20歳の夏頃わたしは学校の夏休みを利用してアメリカへ行きました。
行き先は西海岸サンフランシスコ。
寮生活をしながら現地の幼稚園で勤務をしたり観光をしたりするプランで、それまでにニュージーランドとカナダの短期留学を経験していたわたしは「そろそろ英語を勉強するために海外に行くのでなく、英語を使うために海外に行きたいな」と考えていました。
一生懸命英語も勉強して来たし、そろそろ実践かな…なんて思っていたわたしを待ち受けていたのは、破茶滅茶(?)なアメリカの幼稚園だったのです!
CIBI CHAN PRESCHOOL
わたしが勤務体験として行くことになったのは「ちびちゃんプリスクール」という可愛い名前の幼稚園。そう、その幼稚園の創設者が日系アメリカ人で「ちびちゃん」という日本語の響きが気に入りこの名前をつけたそうです。
働いている職員も、アフリカ系アメリカ人やドイツ系アメリカ人、韓国系アメリカ人や日系アメリカ人など様々な人が働いていました。
そしてさっそく事件が起こります。なんとわたしは園長先生との初対面の日に2時間も寝坊してしまったのです…!!わたしは時間にルーズではありません。日本で寝坊で遅刻したことは今まで一度もありません。
そ・れ・な・の・に!!なぜかアメリカでは大遅刻…。慌てて寮を出て本気で幼稚園までダッシュしました。
「もう嫌だ〜!絶対怒られる…クビって言われたらどうしよう…」とかな〜り心配しながら幼稚園に入ります。
さっそく園にいた女性に近づき軽く自己紹介。なんとその人が園長先生でした。
その人が園長先生だと知った瞬間わたしは頭を下げて「遅刻しましたっ!本当に申し訳ありませんでしたっ!!」と平謝り。8時勤務開始なのに既に時間は10時半頃だったのです。
すると園長先生が一言。「え?遅刻したの?」
……???
もちろん園長先生はわたしが職場体験に来ることは把握していました。今日来ることも知っていました。でも、時間はあまり気にしていなかったみたいです…。
にこやかに「とにかく宜しくね〜!楽しみましょう〜!」と言われました。
わたしはその時「あ…遅刻って…そんなものなのか…」と拍子抜けしました。
園長先生がそんな様子なので同僚は更に何も気にしていませんでした。丁寧に仕事を教えてくれて、気分良く歓迎してくれました。ほっとしたのを今でも覚えています。
先生は子どもと一緒に遊ばない!?
色々とありましたが、わたしは2歳児クラスを担当することに。クラスの名前はキャタピラー(いもむし)です。
クラスの子どもも人種はバラバラでした。2歳なのでみんなとても可愛かったのですが、実はこの2歳児クラスで驚いたことが2つあります。
1つめは先生たちが子どもと全く遊ばないこと。遊びの時間は全ての年齢の子が庭に出て、ごちゃまぜになって遊ぶのですが、先生たちは一切子どもの遊びに付き合っていませんでした。
元気に走り回る子どもたちをおしゃべりしながら見守っているだけ。先生の仕事は「見守ること」という認識が日本よりもはっきりしていると思いました。
日本でも、もちろん先生たちは子どもを見守りますが、子どもと一緒に走り回ってくれる元気な先生はプラスイメージですよね。しかしアメリカではそれでは「見守る」という職務が全うできないと考えられているようでした。
2つめは子どもたちのお弁当です。ちびちゃんプリスクールはお弁当持参だったのですが、お弁当の時間になって子どものお弁当を見てびっくり。
クッキーとオレンジ(丸ごと一個。どうやって食べる?)だけや、ハム(単品)とチョコレートなど、シンプルすぎるお弁当(?)がほとんど。
一番びっくりしたのは「おっとっと」のような魚の形をしたスナック菓子がお弁当箱に敷き詰められていたお弁当です。他の先生は「アンディーはこのお菓子が好きなのよね〜」とニコニコしていました。
カルチャーショックでしたが「こんなものかな?」と納得。ちなみに一人だけ日本人の子どもがいたのですが、その子のお弁当だけわたしの知っている色取り取りのおかずが数種類きちーっと並べられている「お弁当」でした。
さいごに
実践練習をしようと行ったアメリカですが、実は全然会話についていけませんでした。
語学学校での会話は「どう思いますか?」と発言の機会が与えられ、拙い英語でも相手が補ってくれたり、言葉を思いつくまで待ってくれていたりしますが、幼稚園の日常生活ではそうもいきませんでした。
会話のスピードは早く、単語力も追いつかず、もっともっと話したいのに、本当に悔しい思いをしました。しかし「今のレベルでは実践練習なんか出来ないんだ」と良い意味で自分の本当の英語力を把握できた体験です。
「あのアメリカでの体験があったから今の英語力があるんだな」と感じています。サンフランシスコは気候が暖かく晴れの日も多く、あの穏やかな日々は今でもとても良い思い出です。