私はカナダに行くまで「オタク」に会ったことがありませんでした。
テレビなどで放送されているオタクを見てその風貌や雰囲気などは知っていましたが、本当のオタクには会ったことがなかったのです。
そんな私の初のオタクとの対面の機会――それは意外にもカナダでやってきました。
しかも相手はタイ人のオタク。
今回はその時の体験記を書きたいと思います。
外国人オタクと私の奮闘記inカナダ
私がカナダに短期留学をしていたある日のこと。私が滞在していたホームステイ先に新たに新しい留学生が加わることになりました。
「今度はタイ人の男の子だよ。これからはタイ料理が食べれるね」
とホームステイ先夫婦の夫ボブ。
「りこと同い年で同じ語学学校に通う子だから一緒に学校に通えるね」
と妻のケイト。
私も「タイ人の人か〜どんな人かな〜」と楽しみにしていました。
そして現れたのがタイ人留学生のブンミー。そのブンミーこそが私が初めて出会ったオタクだったのです。
ブンミーが初めてカナダを訪れた日に私たちは歓迎の意味を込めて少し豪華なディナーをしました。美味しいディナーを食べ、食後のコーヒーを飲んでいるとブンミーが
「学校でどんなテキストを使ってるの?」
と私に聞いてきたのです。
「じゃあ後で部屋に持って行ってあげるよ」
と私。その数時間後私がテキストを持ってブンミーの部屋を訪れると…
「……なにこれ?」
ブンミーは日本の女子高生の制服がズラーっと並んだ写真をインターネットで見ていました。その数のおびただしいこと。
私が驚きのあまり声を失っていると
「ねぇ…りこって日本人なんだよね…」
とブンミー。
「う、うん…」
と私。するとブンミーはニヤニヤと嬉しそうな顔で
「ねぇ、りこはどんな制服を着てたの?ハァハァハァ」
と聞いてきたのです。
「スカートはどれくらいだったの?ハァハァハァ」
と聞かれたところで
「こいつはヤバイ!!!」
と思いテキストを投げるように置いて部屋を飛び出してしまいました。
最悪なことに私とブンミーは同じホームステイ先から同じ語学学校に通っていたので、毎朝一緒に通学する羽目に。
私が滞在していたカルガリーの冬は朝7時ぐらいはまだまだ暗く、マイナス15度ほどの気温。雪が永遠に降っているという状況でした。
そんな状況なので学校までのバス停で二人でバスを待っているときは寒いし怖いし真っ暗だし隣には怪しいブンミーだし、気分がズーンと落ちていました。
そうして数日ブンミーと一緒に語学学校に通ったある日…
「あれ?ブンミーの部屋が空だけど…」
「なんだか急に友達とルームシェアするからって行って出ていったよ」
とケイト。そう、ブンミーはある日突然ホームステイ先から姿を消したのです。
「ほっ」
としたのもつかの間、ボブが
「そう言えばこれをりこに私てって」
と一通の手紙を差し出しました。
あの一件以来あまりきちんとブンミーと話さなかった私。「一体なにが書いてあるのかな?」と気になり開いてみるとそこには英語でこう書かれていました。
もしかしたら僕は君を怒らせてしまったかもしれないね。
でも僕は君がどんな制服を着ていたのか知って見たかったんだ。
なぜなら君は僕が初めて会った日本人女性だったから。
そんな君にお願いがある。
日本に戻ったら君の制服の写真を送ってほしい。
アドレスは……
「ぎゃーーーっ!!」
どこまで制服にこだわるのか!と私は途方にくれました。ブンミーは日本のアニメ&制服オタクだったのです。
「なになに?なにが書いてあるの?」
とボブとケイトに聞かれましたが私は
「なんでもありませんっっ」
とものすごい勢いで手紙をしまったのは言うまでもありません。
私とブンミーは同じ語学学校に通っていましたが、その語学学校は大きな学校だったので学校で顔を合わせても話すことはありませんでした。
あとがき
実はブンミーがホームステイ先を去ってから一度だけショッピングセンターでブンミーに会ったことがあります。
たまたまお互い一人でバッタリ会ってしまったので会話をしました。
「GAPに行かない?」
とブンミーに誘われ一緒にGAPに。何をするのかと思いついて行くと
「甥っ子と姪っ子に洋服を買うんだ」
と言っていました。状況がよく分からずブンミーの買い物に付き合う私。
ブンミーは甥っ子と姪っ子に一生懸命洋服を選んでいました。
それから買い物を終えあっさり解散したのですが、今思うとブンミーはオタクですが意外と良い人だったのかも知れません。私がカナダから帰ってからは音信不通になってしまいましたが、今彼はどうしているのでしょうか。
これが私の海外オタクとの体験です。