失われたアークを目撃!!エチオピアのお祭りティムカットを体験

エチオピアにはティムカットというお祭りがあります。

これはエチオピアの北部で信仰されているエチオピア正教のお祭りです。

エチオピア正教の大本山はエチオピア北部のアクスムという街にあり、ここにはモーゼがシナイ山で受け取った十戒を入れた箱(聖櫃・失われたアーク)が収められていると言われています。

エチオピア正教のすべての教会には、この聖櫃(エチオピアでは「タボット」と呼ばれます)のレプリカが収められており、最も神聖なものとされています。

その聖櫃が毎年1月19日に信者に披露されるのが、ティムカットのお祭りです。

今回はそんなティムカットのお祭りに参加した私の体験談をお届けします!



教会に向かう、白い人々

それは、私がエチオピア滞在1年目の1月19日の朝のこと。

ホテルの部屋の窓を開けて、ベッドに寝転がっていると、窓からホテルのオーナーの息子が顔を出して、「行くぞ」と言うのです。

「どこへ?」と聞くと、「そんなこと聞くなよ。決まっているだろう」という表情で彼は「教会へ」と言いました。

私が「なんで?」と聞き返すと、彼は「ティムカットだから」と答えました。

ティムカット、と言うお祭りのことは知っていたので、私は「行く!!」とベッドから起き上がり、カメラを掴んで、ホテルの入り口に急いで出て行きました。

ホテルの入り口から通りを見渡すと、白い布を羽織った人々が教会方面に向かってぞろぞろと歩いていました。

私もホテルのオーナーの息子とその友人たち4、5人で、そのぞろぞろの列に加わりました。

ついにアークを目撃

教会の前にたどり着くと、少年少女による歌と楽器の演奏がすでに始まっていました。

楽器は主に太鼓とラッパ。ラッパと言っても、トランペットではなく、タロットカードの「審判」にあるようなラッパ。

歌の合間には「ヒャラララララララ」と集まった女性たちが声を出したりします。

集まった人々は手を叩いたり、一緒に歌を歌ったり。

周りの人々の気持ちがどんどん高ぶっていくのが伝わってきました。

そのうち、教会の扉が開き、中から神父さんが3人出て来ました。

その時、なぜか年老いたおじいさんが、私を一番見やすい場所に案内してくれました。

おかげで私は写真撮影をしやすい一番前の場所で聖櫃を見ることができました。

出てきた神父さんたちのうちの一人の頭の上に緑色の布に包まれた聖櫃を乗せられていました。

第一印象は思ったより小さいんだな、と言うことでした。

神父たちは、教会の周りを歩き始めます。聞くところによると、3周するのが習わしだそうです。

なぜ3周するのかというと、エチオピア正教会はキリスト教でいう三位一体を重要ししているため3という数字にこだわるようです。

タボットが教会の聖堂の周りを3周し終わると、神父さんたちは教会の中に戻って行きました。

そして、神父さんが一人、みんなの前に出てきて、説教を始めます。

その合間にも、女性たちは「ヒャラララララララ」という声をあげます。

そして、再度少年少女による演奏が始まりました。参加者が代わる代わる太鼓を背負って、演奏を行います。

そのうち、楽団が先頭になって村の中心部へと歩きはじめました。

みんな、それについて歩きながら、歌を歌います。

時には「ヒャラララララララ」という声をあげながら歩いていきます。

村の中心部の入り口にある大木のところまで来ると、楽団は歩くのを止め、そこで演奏を始めます。

しばらくすると、音は止み、男性が2、3人順番に挨拶を始めました。

男性の挨拶が終わると、みんなパラパラとその場から離れて行きました。

どうやら、儀式(?)は終わったようです。

実はここからが一番重要!?

この儀式(?)が終わると、私はホテルのオーナーの息子に連れられて、彼の自宅に招かれました。

そこには彼の友達や親戚が集まっており、床には葦のような草が巻かれていました。

部屋中に乳香の香りとコーヒーの香りが漂っていました。

席に着くと、ピザのLサイズよりもひと回りほど大きな、ふっくらとしていないホットケーキのようなものが出てきました。

ホテルのオーナーの息子がそれを切り、お客さんに配りました。

なぜか、私には最初に手渡されました。外国人だったので、おそらく一番大事なお客様ということを示したようです。

配られたパンを手にした瞬間、正直驚きました。ずっしりと重たいのです。

みんなにパンが行き渡ったら、一番の長老(おそらくホテルのオーナー)が挨拶をします。

最後にみんなで一言「アーメン」と言い、パンを食べ始めます。

一口食べて、またちょっとびっくり。酸味とパサつきがあって、発酵しているような発酵していないような、そんなパンでした。

そのうち、小さなカップに入れられたコーヒーが手渡されました。

コーヒーの香りとともに塩味のコーヒー(エチオピアではコーヒーに塩を入れて飲むことが多いのです)でパンを流し込むという食べ方になってしまいました。

しばらくすると、オーナーの息子がいくぞ、というのでついて出て行くと、隣の家に入って行きました。

そこには、すでに10名くらいの人々が集まっていて、片手にコーヒーの入ったカップ。もう片方の手にはちょっと重たいパンを持って、歓談していました。

そして、私にもまたパンとコーヒーが手渡されました。

この後、さらに近所の家を2、3軒回って、もう何も食べれないという状態になって私はやっと解放され、ホテルの部屋に戻りました。

あとがき

エチオピアのお祭りには何らかの儀式のようなものがあります。

しかし、一番重要とされるのは、どうやら家族や親戚、近所の方々と短い時間でもいいので一緒に過ごすことのようです。

私のようにいただいたものは、失礼になるから全部食べてしまうと、訪問できる家も少なくなってしまい、訪問しないと、後日、「何で、あなた私の家にこなかったのよ!!」と怒られてしまいます。

このような人と人のつながりを大切にすることで、彼らはお互いに助け合える関係築いているようです。